さて、公演は終わり、今回の芝居の評価について少し書きたいと思います。
わたしには、演劇の師匠と言う人がいます。
自慢じゃないですが、その人は演出家で、相当のプロです。
で、いつも、芝居の評価は、師匠に見に来ていただいて、ジャッジしていただくことにしています。
師匠の芝居を見る目は天下一品です。
例えば、すごいうまい人の演技と、すごい下手な人の演技は、誰でもわかりますよね。
でも例えば、及第点の演技が60点だとして、及第点だと一般的には、演技は良かったということになるのですが、では60点の演技と80点の演技の差を見分けられますか?
あるいは、70点と75点の差がどこにあるのか、その違いを指摘することができるでしょうか?
普通はそこまで分からないですよね。
しかしそれが分かるのが、プロなのです。
とはいえプロでも、相当のプロでないと、70点と75点の差を見分けることなどできません。
わたしの師匠はそれができるのです。
何が言いたいかと言うと、芝居のできをジャッジしてもらうにはわたしの師匠は最適最高の人なのです。
それで、今回の公演も観に来ていただく予定だったのですが、なんと本番当日午前中にメールが来て、39度を超える熱が出た、これから病院に行くので、今日の観劇はゆるせ、とのご連絡をいただいてしまいました。
師匠は、もう結構なご高齢ですので、39度も熱が出るなんて、辛いだろうなあ、かわいそうにと思いつつ、一方で、あ、そうか、今回は、師匠からジャッジしてもらえないのだという残念な気持ちにもなりました。
しかし、いずれにしてもこれから本番ですので、それは仕方ないこととして、気持ちを切り替えて、引き続き本番の準備を進めました。
ということで今回はいつも当てにしている師匠のジャッジを受けられなかったのです。
(ちなみに、AT公演第一回、第二回はそれぞれ、観に来ていただきました。評価ですが、二つとも、「まあ、よかったんじゃないか」という評価を頂きました。つまり2つの公演とも決してひどい芝居ではなかったということです。もしぼくは、二つともひどい芝居だったと師匠に言われていたら、ATは畳んでいたと思います)
さて、いま公演が終わり、客電がついたところで、わたしは初めてこの公演で一声をあげました、「本日は、ありがとうございました、恐れ入りますが、お手元のアンケートにご協力お願いします」と。
ロビーには、既に、役者が整列し、お客様が場内から出てくるのを待っておりました。
待っておりましたが、一向にお客さんは出てきません。
あれ、どうしたのかしら?と劇場内を見てみると、どうもお客様は、アンケートを書いているようでした。
そんな状態がしばし続いて、ぼくが掛け声かけて、10分を過ぎたあたりから、やっとお客様が場内から出てき始めました。
まあ、その後は、順次それぞれ役者とお客様とで、歓談したりしていたのですが、アンケートもどんどん回収されてゆきました。
そして後で計算したところ、今回のアンケート回収率は、2ステージ通して、95%という高い数値を記録しました。
実はアンケートに関しては、第一回公演は、劇場企画のオムニバス公演だったので、各グループ毎のアンケートはもらえず、また2回目は、今回と同じ劇場でしたが、前にも書いたとおり、動員が非常に少なかったので、アンケート回収率は低くはなかったと思いますが、あまりアンケートを書いていただいた感じは残りませんでした。
また2回目の公演のアンケート内容も評判はそこそこよかったように思いますが、師匠には、アンケートを書いてくれるお客さんは、大抵いいことしか書かないんだ、とも言われていたので、まあ、良く書いてくれているものは、嬉しく思いましたが、それに芝居の評価を見ると言うよりは、それは参考程度で、基本的には、師匠のジャッジを基準に演出者としてのわたしは、自分の芝居を評価していました。
しかし今回は、師匠にこそ芝居を見てもらえませんでしたが、アンケートの回収率が高く、100枚ほどのアンケートをいただくことができました。
ですので、今までの公演の中ではじめて、アンケートが意味をもつレベルの量と質になったように思いました。
従って、今回は、このアンケートの中身を、評価の大きな基準にしたいと思います。
で、結論としては、アンケート結果を見た限りでは、「まあ、よかったんじゃないか」という評価をしてよいのではないかと思っています。
つまり、決してひどい芝居ではなかった。
まあまあの芝居だったのだと、低く見積もってもそれ位は思ってもいいのかなと感じています。
わたし自身は、前に書いたように、通し稽古でわたしの中での及第点をあげれるところまでは到達していたと思っていたし、また本番でも、役者陣が大きく乱れることもなかったので、いいほうにとってあげていいのかなと思っています。
そして、アンケートを見て、一番嬉しかったこと、わたし的にはちょっと自慢したいことは、今回は2時間という長い芝居であって、わたしたちの芝居がつまらない上にただ長いだけの芝居だとしたら、どんなにお客さんにとっては苦痛だろうと、そればかり心配していたのですが、アンケートの中になんと、「2時間あっという間でした」という感想が少なからずあったことです。
これは嬉しかったし、心底ホッとしました。
つまらない芝居を長く見なければならないことの苦痛はわたしが身をもって知っていることでしたので、これはほんとによかった。
そしてちょっと驚きました。まさかアマチュアシアターで、2時間の芝居を持たせられるとは!と。
演出者のわたしにとっては、これが今回の芝居の評価で、アンケートに関しては素直に受け止めようと思っています。