⑦読み合わせ(後編) | 第三回公演の記録

めぐさんは、3月の2回目の稽古で、アマチュアシアター卒業となってしまいました。

 

2回目の稽古では、1回目の読み合わせをめぐさんで、2回目の読み合わせをわたしでやりました。

 

そして、番上役で一通り読み合わせをやってみると、それだけで、実は、体調的には疲れてしまい、ふらふらし、めまいがしていました。

 

その後、どうしよう!こんなんじゃ役者できないよう!という思いで、実は、うつうつとしていたのですが、そんな時、第1回目の公演で出演してくれた元メンバーりんごのことが思い浮かびました。

 

りんごとはその後もたまーに、メールでやり取りしたり、第2回目の公演の時は手伝ってもらったりしていました。

 

それで、よし!りんごに愚痴ろう!という気になって、仕事の合間に愚痴メールを送りました。

 

内容は、読み合わせの2回目になって突如、メンバーが出演できなくなって、ぼくが、その後を引き継ぐことになったんだけど、演出も役者も両方なんてできないよう!でもいまさらゼロからやり直すわけにもいかず、今、結構苦しい状況です、みたいなことを書いて送りました。

 

そしたらりんごから、結構早めに返信がありました、「わたしが出演したらなんとかならないか?」、と。

 

それをみてぼくは、おお!りんごはいま舞台に出れる状況なのか?と思いました。

 

りんごは、仕事もハードなシステムエンジニアで、公演の後、結婚もしていたので、まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったのです。

 

しかし、仮にりんごが出れるとしても、番上は男役だし、やっぱり無理だと思いました。

 

その旨を再びりんごにメールで送りました。

 

するとりんごから再び返信があって、「男役でもいいよ、けいちゃんがちゃんと演出してくれたら、男気見せるわよ」というのです。

 

えー!更にびっくりでした。実はりんごは、第1回公演の時、男役だったのです。

 

りんごは女性としては大柄な方なので、たしかに男役でも出来てしまうのです。

 

そういえばそうだ!とぼくは思いました。

 

それで、じゃあぜひ一度、稽古場に来てみて、台本はすぐに郵送するから読んでみて、とメールしました。棚からボタ餅のような展開でした。

 

まさかりんごが手をあげてくれるなんて思ってもみなかったのです。

 

こうして急きょ、他のメンバーにも番上役として新しい出演候補者が現れたことを伝えて、それで、4月の1回目の稽古にりんごが参加したのです。

 

そして結論から言うと、実はちょっと紆余曲折はあったのですが、りんごが第3回目の公演に番上役で出演することになったのです。

 

演出者としてはやれやれ、そして、自分が役者をやらなくてすんで、本当にホッとしました。

 

そして、改めて、役者4人と演出の5人体制での第3回公演を目指す稽古が始まったのでした。

 

ringo

 

ところで公演費のことですが、もしめぐさんが抜けて、ぼくも入れて公演参加メンバーが4人になった場合、公演予算は、5万円 × 4人 で20万円になってしまいます。

 

それで、公演予算は最低25万円と考えていたぼくは、めぐさんに最後の稽古の後、1万円出してくれるかな、とお願いしたのです。

 

それで、他のメンバーが6万円ずつ出せば、25万円になります。

 

幸いめぐさんは、快諾してくれて、後日、1万円を入金してくれました。

 

わたしの言い分としては、もう劇場まで取ってしまって、本格的に本番の稽古が始まった後での降板でしたので、めぐさんに1万円は負担してほしいと思ったのです。

 

しかし、その一方で、めぐさんは、今回の降板にあたって、彼自身は、何の落ち度もないわけで、むしろかわいそうなのに、それなのに公演費の負担を求めるのはどうなのか?という疑問は残りました。

 

そして、後に、公演費用として、めぐさんに、1万円負担してもらった旨をメンバーに伝えた時、それはいくらなんでも申し訳ない、めぐさんには1万円返すべきだ、という意見が出ました。

 

そしてそれを主張したメンバーは、めぐさんの分は自分が出すと言い出したのです。

 

もちろんそんなことはさせられないので、それならばぼくが出す、みたいな話になったりもしました。

 

それでみんなで話し合って、結局のところ、もし、公演終わった後に、ちょっとでも余りが出たら、その分は、めぐさんに返そうということになりました。

 

そして、先回りして言えば、公演の予算から、公演費用を引いた余りが、3万円ほどありましたので、その中から1万円をめぐさんに返すことができました。

 

そして、実際には、りんごが参加することによって番上役を引き継いでもらえたので、メンバー一人の負担金額は、前提通り、5万円で、りんごは、4万円としました。

 

めぐさんに1万円負担してもらったし、りんごには、窮地を助けてもらったというおもいが強かったので、りんごは、4万円負担としたのです。

 

そして、これで、参加メンバーからの公演費用が25万円で、ATの維持費積立金5万円と入場料収益2万円(推測)として、予算32万円でのアマチュアシアターの公演のための活動が改めて始まったのです。

 

 

ところで、めぐさんに1万円の負担を求めたことは、まずかったのかということですが、これに関しては、私見ですが、わたしは次のように考えます。

 

アマチュアシアターの基本スタンスは、メンバー(主に社会人)が、自分たちの責任で、お金を出し合って、活動の場を作っている、ということです。

 

そして社会人である以上、芝居を最優先にすることはできないし、いろいろな現実の制約の中で、それをくぐりぬけて演劇活動を実現しようとするものです。

 

そしてアマチュアシアターの活動は、公演のためにあるのではなく、あくまでそれはめどではあるにしても、その活動の本体は、一回一回の稽古の中にあるのです。

 

どんな事情で活動が続けられなくなるかわかりません。

 

だから、一回一回の活動がアマチュアシアターにとって最も大事なものなのです。

 

ところで、本番のための稽古は、レギュラーの稽古と違って、別途公演費を参加メンバーから徴収します。

 

そして、劇場が決まり、本番の稽古が開始された時点で、参加メンバー全員に公演に対して、責任が生じるのです。

 

責任といってもそんな大層なものではありません。

 

公演実現のためにゆるされる範囲で努力すること、そして公演費の負担です。

 

今回は、まだ本番のための稽古間もない時期であったため、めぐさんは悪くないのに、公演費を負担させたと思われたかもしれませんが、では、公演3カ月前になって、出演者の一人が、仕事の都合で、日曜日の稽古が出来なくなってしまった場合は、どうでしょう。

 

社会人中心のアマチュアシアターにおいて、それは当然ありうることですし、簡単に代役のきかないアマチュアシアターとしては、おそらく公演は中止となるでしょう。

 

その場合、それまでにかかった諸経費及び劇場のキャンセル料代を誰が負担するべきなのでしょうか。

 

結論から言えば、はやりそれは等分負担なのです。

 

アマチュアシアターとしては、仕事の事情や家族の問題などで、メンバーが活動に参加できなくなることは、当然予測されてしかるべきことであるし、そんなことが起きることは、不断の覚悟でなければならないのです。

 

そういう現実の中で、演劇活動をやるというのがアマチュアシアターです、活動を継続できなくなる可能性は、全てのメンバーに該当することです。

 

それを承知でやっているわけですから、社会人として避けがたい事情で、公演に参加できなくなるメンバーが現れて、しかも、それで公演中止になった場合は、やはり、みんなで負担するべきなのだと思います。

 

誰が悪いわけでもない、参加メンバー全員で等分に責任を取るべきなのです。

 

そしてわたしは思うのです、そんな制約のある中でやっているアマチュアシアターの活動で、もし、公演が実現できたとしたら、それは、ひょっとしたら神様からいただいたご褒美なのではないか、と。

 

ちょっと神がかった言い方になってしまいましたが、とはいえ、公演は今回の公演も含めて3回実現してきたし、そして何よりも、本番に向けて稽古できるということ・稽古すること、その一回一回が、やはりアマチュアシアターの活動の本体なのだと思うのです。

 

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