さて、再び、台本探しとなったのですが、ここでまたしろれさが力を発揮してくれました。
2010年のメンバーで台本選定をしていた時、候補の中に、本谷有希子さんの『幸せ!最高!ありがとう!まじで!』という作品がありました。
結局、その時はボツになったのですが、それはぼくが提案したものでもあり、他のメンバーにも評判はよかったのです。
そしてしろれさは、それを覚えていて、今回の台本探しの中でも、本谷さんの作品を調べてくれていました。
そして、本谷さんの舞台作品では、『乱暴と待機』という作品がキャスト構成があっているということが分かりました。
それはちょうど4人芝居で、男2女2の構成なのです。
それは戯曲として出版されていませんでしたが、小説となって文庫で出版されていました。
しろれさはそれを読んでいたのです。
しかし小説を読んだ限りでは、彼女は、ちょっと・・・、という今一な感想でしたので、だめなのかなと思って、その時はわたしは読まずに放っておきました。
しかし『今度は愛妻家』がボツになったことを受けて、ぼくもキャスト構成で可能性のある『乱暴と待機』という作品を読んでみることにしました。
それで、すぐにしろれさが持っていた小説版『乱暴と待機』を借りて読んだのです。
読んでみるとぼくは、むしろこれは面白いじゃん!と思ったのです。
なかなか面白い、本谷さん、力ある作家だなあと思いました。
それで、そのことをしろれさにも告げて、じゃあ、戯曲版の『乱暴と待機』を読んでみようということになったのです。
インターネットで調べると、『乱暴と待機』の台本は、ある演劇雑誌のバックナンバーの中におさめられていることが分かりました。
そこで、主に舞台芸術の図書や映像を扱っていて、演劇雑誌などのバックナンバー等も収めてある、新国立劇場情報センターにバックナンバーを探しに行くことにしたのです。
新国立劇場情報センターはわたしの自宅からも近いので、早速、行って、戯曲の部分をコピーしてきました。
ぼくは読むのが遅いので、しろれさにまず読んでもらいました。
すると彼女は今度は、戯曲版ならやってもいいかも!と言ってくれました。それに続いて、わたしも読んでみると、小説を読んだ時のような面白さが戯曲にもあり、ああこれならやってもいいなと思えました。
そこでわたしは、すぐにこの戯曲が実際にアマチュアシアターで上演可能かどうかを演出として検証する作業に入りました。
そして2月の2回目の稽古で、『乱暴と待機』をメンバー全員に提案したのです。
再びメンバーに役を振って、読み合わせをしてみました。
読み合わせの後、特に誰からも反対が出ず、やってもいいんじゃないのという反応が帰ってきました。
こうして晴れて、アマチュアシアター第三回目の公演の上演台本は、本谷有希子さんの『乱暴と待機』ということに決まったのでした。
これで、ぎりぎり1月末までに台本が決まったので、2月の演出の準備期間を経て、
3月からいよいよ本番の稽古をスタートできることになったのです。
改めて2010年と2012年の台本探しを経験してみて分かったことは、メンバー構成にあった既存の台本を探すというのはとても大変な作業だということです。
既存の台本をやることのメリットは、ずばり、たとえ私たちがアマチュアであっても、一流の台本を使えるということです。
デメリットは、キャスト構成にあった台本を探すのが非常に大変ということです。
本来は演出者でありリーダーでもあるわたしが、もともと戯曲をたくさん読んでいていくらでも候補を挙げられるというなら問題ないのですが、わたしの戯曲読書量は明らかに少なく、そんなわたしの不勉強がたたって、こういうところでしわ寄せが来るのでした。
また一方、オリジナルの戯曲をやることのメリットは、そのグループの構成に合わせて、戯曲を書いてもらうことができるし、役を増やしたり、役を削ったりするなど柔軟度が高いところです。
しかしやはり既存の台本に比べて、どうしてもクオリティが落ちてしまうところがデメリットとなるのではないでしょうか。
いずれにせよ、台本を探してきて、決定するのはわたしの責任でしたので、『乱暴と待機』と決まって、これでやっと台本探しからは解放された、とわたしは心からホッとしたのでした。