⑬舞台セットの話しⅣ | 第三回公演の記録

それで急いで、再び、ネットで舞台製作会社を探しました。

 

それで見つけたのが、この公演で、舞台セットの作成と、設営をお願いすることになる、㈱フラワートップさんでした。

 

しかもよく見たら、事務所が東新宿にあり、劇場からも稽古場からも近いし、ここでお願いできたら、いいなあと思いました。

 

それで再び、webからコンタクトフォームに簡単な作業の内容を書いて仕事の依頼をしました。

 

すると翌日、メールで返答があり、ご依頼の内容についてこちらでお力になれると思いますので、ぜひ一度打ち合わせをお願いします、と来ました。

 

それで公演まで時間がないのですぐに都合を合わせて打ち合わせの場を持ちました。

 

 

今度は平日の夜でしたので、わたしは一人で行き、フラワートップさんは、二人で来ました。

 

今度は、うまくやらなきゃいけない、後がないんだぞという気持ちで、どうぞいい会社でありますようにと思って臨みました。

 

打ち合わせは、東新宿のタリーズカフェでやりました。

 

お互いに簡単に自己紹介した後、また図面などの資料を渡しながら、お願いしたいことの詳細を伝えてゆきました。

 

話はスムーズに進み、依頼内容については十分対応できますとのお返事をもらえました。

 

そして、次の関門、費用のことを話しました、「それでですね、こちらの予算としては、7万円でお願いしたいのですが」、というと、「ああ、はい大丈夫ですよ」と返ってきました。

 

そして、実は前の舞台製作会社の時は、7万円+消費税(3,000円)、だったので、「7万円プラス消費税ですかね」と確認したところ、「いえ、予算7万円と言うことですので、全部で7万円で大丈夫です」と言ってもらえました。

 

てっきり私は、消費税は、常識なのかなと思っていたので、全部込みで7万円と言われ、うれしくて、なんていい会社なんだろうと感動してしまいました(心の中で)。

 

そして、今後のことについても、「やはり、一度、劇場に一緒に行って、確認したほうがいいですかね」と聞くと、「いえ、仕事の内容は十分に把握できましたので、後は、後日担当の者が、劇場に行くと思いますが、アマチュアシアターさんは同行しなくても大丈夫ですよ」と言ってくれました。

 

「じゃあ、後は、本番当日にお会いするということでいいのですね?」と聞くと、「はい」、と言ってくれました。

 

前の会社で、劇場での打ち合わせで、嫌な感じになってしまったので、今回もその試練があるのだろうかと思っていましたが、もう後は、こちらの方で動きますから、と言ってもらえたのでホッとしました。もともとそんなに難しいことをお願いしているわけでもないので、それはそれでありだよなあ、と納得しました。

 

そして、その打ち合わせが終わり、帰宅した後、例の舞台製作会社に、仕事依頼のキャンセルの連絡をすぐにしました。

 

わたしはホッとしたのでした。とにかく舞台作りとか当日のスタッフの手配とかは、全くわたしの責任ですので、それがしっかり手配できるまでは、緊張感が続きます。

 

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さて、舞台セットについては最後に、さらなる展開がありました。これはちょっとしたことではあるのですが、もし修正されていなかったら、本番の上演にすごい影響の出ることだったので、書いておきます。

 

フラワートップさんとの打ち合わせの後も、何度も図面を見ながら、本当にこれで、予定したように舞台ができるだろうかと、復習していたのですが、今回の舞台セットで最大の肝は、2段ベッドから壁を乗り越えて、壁の後ろの脚立に乗り移るというところでしたが、それには、ちょうど頭上にある、天井の鉄棒にぶら下がるような形で体を支えながら、乗り移るというものでしたが、ちょうど乗り越えるところに、しっかり2段ベッドをセットできるか、ちょっとでも位置がずれたら、鉄棒が届かなくて、できなくなってしまうのではないかという不安をずっと持っていました。

 

図面上では大丈夫だと思われましたが、実際にセットを置いたときに間隔がずれることもあるだろうし、そこはやはり若干、ずれてもだいじょうぶであることを前提にしなければならないと思いました。

 

もしちょっとでもずれたら、できなくなるようなら、その時の対処法を考えとおかなければならない。

 

それはぼくの仕事だと思いました。それでどうしてもそれを確認したくて、ゴンジと一緒にもう一度、脚立から脚立への乗り移りの実験を劇場ですることにしました。それが11月の半ばのこと、もう公演まで半月を切っていました。

 

今度の実験は、劇場のスタッフさん抜きで、わたしとゴンジの二人でやりました。

 

そして、結果として、乗り移りの位置は、多少左右に動いても、その鉄棒でその動きはできることが確認できました。

 

そして、この作業を改めてやることを通して、舞台セットの仕様上で、大変な誤りをしていたことに気付いたのです。

 

それは、壁の寸法、高さのことです。

 

前のところで書いたとおり、5月の初めころ、劇場のベテラン演出家さんとわたしとゴンジの3人で実験をし、壁の高さは2mがよいということになっていました。

 

しかしそれは、よくないことにその演出家さんにそう言われて、自分でも、はっきりとイメージできていなかったにも関わらず、彼を信じて、そうした、というところがありました。

 

ところが、今回もう一度、ゴンジと二人で実験をしてみると、今度は、なんか自分のペースで出来て、すると、どうも2mの壁だと乗り移るのが厳しいということが分かったのです。

 

何度も試してみましたが、脚立と脚立の間に2mの敷居があると、どうしても乗り移る時に、ゴンジの足が、2mの高さのところに引っ掛かってしまうのです。

 

そして、改めて、壁の高さを1.8mでやってみたところ、これなら、すっとうまくいくことが分かったのです。

 

今まで、2mで考えていたのに、なんと二人だけでやってみたら、2mではうまく行かず、1.8mでないといけないことがこの時になってやっと分かったのです。

 

その時、何度もゴンジと確認しましたが、やはり1.8mがベストでした。

 

それで、よし、仕様変更だ、壁の高さは1.8mでゆく!ということになったのです。

 

そして、帰宅してから、すぐフラワートップさんに、壁の仕様を高さ2mから1.8mにしてくれと、メールしました。

 

すると翌日、フラワートップさんから返事があって、ちょうどパネル(壁)作りの作業に入るところだったので、言っていただいてよかったです、とありました。

 

 

それが、11月15日、ちょうど公演の半月前のことだったのです。

 

この仕様変更はちょっとしたことに見えるかもしれませんが、もし2mのままで設営されていたら、本番前日、場当たりの段になって発覚して取り返しのつかないことになっていたかもしれません。

 

つまり壁の後ろに乗り移るところのシーンができなくなっていたかもしれないのです。

 

それが出来なかったら、舞台セットの為に、今まで苦労してきたことが台無しになってしまうのですから。

 

そのことを考えると、今でも、冷や汗がでます。

 

いやー、ほんとに、直前ではあるけれど、ゴンジと劇場に行って試してみてよかった、不安事項をうやむやにしないでよかった、と思いました。

 

そして壁の高さの件は、やっぱり、ぼくが空間的なイメージ力が乏しいのは、仕方ないけど、リーダーであり、演出者である以上、自分できちっと納得して、ひとつひとつのことを決定していかなければいけないのだと、本当に学ばされました。

 

これからは、どんなに時間がかかっても、自分が納得するまで、決定をしない、ということを固く決意したのでした。

 

そして、今回このような形で、誤りを本番前に発見できてほんと運がよかったと思いました。

 

 

しかし、実はそれでも結局、公演の前日の場当たり、ゲネプロが終わるまでは、乗り移りのシーンがうまくいくかどうか、不安でドキドキしていたのです。結果は、ゴンジのナイスな脚立回しで、うまくイメージ通りのものをお客さんに見てもらうことができました。

 

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