さていよいよ通し稽古という段階にきました。
通し稽古の日数は、全部で8日、一日の稽古で2回通すとして、16回、何回か通せない日があったとしても、最低、12回は、通し稽古ができるという計算でした。
12回と言うのは、わたしとしては、十分な回数であると思っています。
はじめての通し稽古は、確か10月21日の日曜日だったかと思います。
演出者のわたしはドキドキでした。
きっと役者のみんなもドキドキだったかと思います。
ちゃんと、稽古したとおり、エンディングまでたどり着けるのか、途中で致命的な段取りのミスが発覚して、中断しやしないか、果たして、全部通すと一体どれくらいの時間がかかるのかなど、いろいろな心配が駆け巡りました。
通し稽古なんてものはとにかくやってみないと分からないのです。
特に時間を測るのは大事ですので、ストップウォッチは必需品です。
いよいよ通し稽古の1回目の開始です。
ぼくは、なんとか大きな失敗がなくゴールまでたどり着いてくれ、と祈るような思いで、通し稽古開始の合図を出しました。
通し稽古の第一回目が終わりました。結果としては、特に大きな問題もなく、最後のエンディングまで、たどり着くことができました。
演出者としては、まずはホッとしました。
役者のみんなの気持ちはわかりませんが、きっと同じような気持ちだったんじゃないかなあと思います。
そして、通しの時間ですが、2時間10分でした。
希望的観測では、1時間50分位を考えていたので、これは大幅な超過でした。
その当時の気持ちとしては、ぼくは2時間もの作品を観客に見てもらう自信はありませんでした。
自分の経験として、正直に言って、2時間以上の公演の観劇で、最後にまで楽しめた経験などめったにありません。
いかに2時間持たせるのが難しいことか、そしてつまらない芝居だった場合、その2時間がどんなに観客にとって苦痛なものかを、実体験としてぼくはよく知っていました。
今までのATの公演は、第一回公演は30分、第二回公演は1時間15分でした。
そしてこれからもアマチュアシアターでは、せいぜい1時間半位の上演時間が上限ではないかと思っていたのです。
だって、プロを標榜する、あるいは有名な劇団の公演でさえ、2時間楽しめる公演にお目にかかれることなどめったにないのです。
それがどうしてアマチュアシアターで可能でありましょうか。
観に来ていただいて方に辛い思いをさせるに違いないと思っていたのです。
しかしまあ、今回の作品は、1時間50分位はかかるだろうことは予測していました。
でも少しでも短く仕上がるならそれに越したことはないと思っていたのです。
だから、2時間10分というタイムをみた時は、うわー、きっついなー、と思いました。
しかし、事実は事実ですので、ショックばかり受けていられないので、すぐに決断しました、シーンをカットするぞっ!と。
で、その時の稽古の終りに、役者のメンバーには、時間のこと、そして、演出者として、シーンをカットする旨、伝えました。
役者としてはね、自分の出番が削られるのは、嬉しくないことなので、気持ちは微妙だったと思いますが、わたしの申し入れを聞いてくれました。
あ、初めての通し稽古の感想は、まあ、初めての通しだったので、大きな欠陥はなかったので、それだけで、わたしとしては御の字でした。
さて、その次の稽古では、カットするシーンをみんなに指示し、カットしたうえで、再び通し稽古を始めました。
結果、最終的な上演時間は、1時間55分となり、それに、カーテンコールを加えて、全部で2時間5分というところに収まりました。
通し稽古は、とにかく回数をこなすことが大事ですから、稽古場に来たら、まずは一回通し、その後、ダメ出し、ちょっと休んで、必要があれば、抜き稽古、二回目の通し、その後、ダメ出し、みたいな感じを繰り返しておりました。
役者もやっぱり、通し稽古をやり始めると、そっちの方が楽しい?みたいで、抜き稽古より、もっと通しをやりたいと言うようになっていました。
通しの回数が増えていくうちに、今までは、各シーン毎のまとまり、リズムであったものが、全シーンを通して、一つのまとまりとなり、芝居全体のリズムが出来上がってきました。